Plusman LLC

2021年4月

Mathematical Medicine Vol. 1

医療用AIの第一人者に聞く Interview with Leading Experts in the Medical AI Field

AIと仲がいい放射線科医でないと生き残れない

青木 茂樹先生

日本医学放射線学会 理事長
順天堂大学医学部附属病院放射線科・部 教授

AIと仲良くなるには?習うより慣れよ

順天堂大学医学部放射線科ニューロンリサーチグループでディープラーニングの研究をしてきたプラスマン代表の大塚裕次朗が、AI研究を率いてきた青木茂樹教授に、AIを用いた研究や臨床利用、専門医教育、保険償還、AIの今後についてお話を伺いました。

順天堂大学 教授 青木 茂樹先生

研究におけるAIの利用が普通になってきた

大塚 私が青木先生に協力研究員として採用いただいて、あっという間に4年弱が立ちました。順天堂は脳MRIの研究で世界をリードしていると思いますが、当時、ディープラーニングいわゆる人工知能に対して何か期待していたことはあったでしょうか?

青木教授 4年前、最初の頃はあれですよね。Hintonさんの話(※)がちょうど出て、放射線科がなくなるかという話と、それから新しいものが出てきて楽しそうなのと、両方、不安と期待が入り混じった感じですかね。

※ 2016年、University of TorontoのGeoffrey Everest Hinton教授が、Mchine Learning and the Marker for Inteligenceにおいて、”People should stop training radiologists now. It’s just completely obvious within five years, deep learning is going to do better than radiologists because this can be able to hit a lot more experience and it might be ten years but we got plenty of radiologists already”と発言したこと

大塚 アクチュアリーを本職としている私にとっては、ディープラーニングは当時はコンサルティングしていた製薬企業の要請もあって、数理モデルの一形態として研究を始めました。4年間にたくさん研究をさせていただき、今では7本の論文が採択され、学会発表も10回以上行っています。今、青木先生にとって、ディープラーニングはどういう存在になっているのでしょうか?

青木教授 大塚さんのお陰もあって、大分研究の中に、普通に取り入れられる感じに。最初は、AIだけで論文書いてたけど、最近はもう普通の解析の中にAIを入れる感じで。Radiology+AIというのを、画像解析+ちょっとAIぐらいで、AIが普通のツールになってきたんだと。

大塚 今後、AIを用いて行いたい研究はありますか?

青木教授 AIのためのAI研究とすると、病気を見逃さないで済むような、普通に読影する時に、事前確率が低いやつを探すのはかなり無駄なので、ないことを確認する作業はAIにやって欲しいですかね。

見逃していることに気が付いていないこともある

大塚 逆に、ディープラーニング(数理モデルの一つ。AIと言えば、ディープラーニングをさす)に関してネガティブな面はどういうものがあるでしょうか?

青木教授 まず妙な期待や中途半端にAIでいいんだという流れなってしまうことはちょっと怖い感じがしますね。つまり、日本は放射線科医がいないでやっている病院や地域が以外にあってですね、世界で見るとヨーロッパやアメリカ、おそらく韓国も、超音波も含めた単純写真は放射線科医が関わっているところが多いんですけど、日本は縦割りが強かったためか、臨床家、主治医が患者さんの健康全て責任を持つみたいな。だから、脳外科の先生が手術したのに、ずーっとその後頭痛とか言ったら必ず脳外科に行くみたいなことがある。

そうだとすると、AIができたら、放射線科医がいらないと思う度合いは更に増す可能性があるので、放射線科医とAIと他の科の関係でいって、他の科にAIがあって放射線科がいると、更にいいんだよということをアピールしなきゃいけないわけです。日本だとAIvs 放射線科医になる場面もちょっと出てくるので、AIだけで存在感を示すよりも、一層放射線科医の価値を高めるような、存在感を出すようなことをしなきゃいけない。

後は、他の臨床科医がAIを使うときは、放射線科医が一緒に使ってた方が安心だとか、そういう方向にしないといけないなと。

大塚 そういった放射線科医の位置付けについて、特定の疾患で言えば、例えば肺癌診療ガイドラインというものがあります。そこでは肺がん患者をどう拾い上げるかということは規定されていて、最初にX線を撮って、その後疑わしければCTを撮ってという風にくるものが、典型とされています。

しかし例えば、腎臓の検査で来ていて、たまたま写ったものを肺癌と疑うというシナリオは、そのガイドラインだと想定できないので、そういったもの全部、色んな専門性を広くカバーする受け皿として放射線科の存在意義の一つがあると僕は理解しています。大体数字を取ると、肺癌で言えば放射線科医が別の目的で撮ってたものから拾ってくるものが、大体3、4割あるとアンケートで伺ったものがあります。にも関わらず、先ほどの例ですと、なぜ放射線科医がいらないという論調になるのでしょうか?

青木教授 自分の知ってるところは比較的わかる。単純なことで、人間ってそこのある目的を持って、ある疾患をやる目的で読影したらその疾患を見たらそれで満足して、他のものが写ってるってことはあまり考えない場合が多いというところが一つですね。

そこでもう一つ入ってくるのが、CTが広範囲に簡単に撮れるようになったということ。昔は肺だけに限って、それも10ミリ厚とかで撮っていた。フィルムに焼いていたので、縦隔条件や肺野条件、もしかしたら肺野しかやらないかもしれなくて、他見ないと、骨も見ない。ところが今は1ミリ厚ぐらいで胸からお腹までみんなデータがあるので、それを詳しく見ると、骨転移もわかる、乳癌もわかる、甲状腺癌もわかる、腎癌もわかる、みんなかなりわかっちゃう。

昔CTが導入された頃よりも今のCTはかなり進んでいるんですけど、他の科の医師が思っているCTのイメージは、自分の使いだした頃から進歩していないことが多いと思います。今や、多分骨転移をみんな見えてますよと、見逃していることに気が付いてないこともある。乳腺写ってますよ、えー、みたいな。

大塚 骨転移って、最近私もちょっと勉強したことがあるんですけど、結構見つけるのが難しいですね。

青木教授 いやもう見え見えのやつ。なんだろう、すごい簡単なやつも見逃していると思うんです。偶発所見に関する心構えがみんな違うのだと思います。

大塚 異常所見の検出はAIの大きな夢の一つですが、目的物の検出に比べて比較にならないほど難易度が高かったので仰っていることはよくわかります。放射線科医が画像診断の最後の砦になっているのだと理解しました。

J-MIDデータのAIによるサーベイランスで異常疾患の流行がわかる!

大塚 最近は放射線科医+AIの力を高めていくべきという論調もあります。例えば順天堂で開発した肺結節AI Plus.Lung.Nodule(※)の感度は98.3%でした。

※ 順天堂大学の青木茂樹教授、隈丸准教授(当時)、鈴木一廣准教授、プラスマンの大塚が中心となって開発した肺結節表示AI

青木教授 Plus.Lung.Noduleがあると助かりますね。とても性能が高く、他社のAIでは拾えない結節も特にGGO(Ground-Glass Opacity)などPlus.Lung.Noduleはちゃんと拾ってくれる。

大塚 ありがとうございます。そのようにおっしゃっていただけてうれしいです 笑

Plus.Lung.Noduleの感度は98.3%ですが、COVID-19のPCR検査の感度は当初、ニュースなどでも聞いていたものは60%ぐらいと言われており、個人的には驚きと同時に不安が生じました。このPCR検査を一つの指針として、世界中が未知の脅威と戦ってきたわけですが、画像診断AIもそういった画像診断における重要な位置を担っていく未来もあり得るのでしょうか?

青木教授 まず、二つのことがあると思います。COVID-19に関しては、最初結構CT、特に日本は気軽にCTができるんで、CTの役割、またはCTでPCR検査が限られていてCTの代わりになるかっていう議論が2020年の3月、4月にあったと思います。それに関して言うと、日本医学放射線学会のホームページにも書いてあるんですけど、限定された条件で代わりに使ってもいいぐらいのコメントになっています(※1)。つまり、PCRが足りないことが悪いんで、PCRを増やす方がいいんですけど、どうしてもできないんだったらCTでPCRの代用をしてもいいだろうと。ただし、フォールスポジティブ、他の間質性肺炎や他のCOVID-19じゃないウィルス性肺炎をみんな間違えてCOVID-19と言う可能性が高いというのは、人が見てもそうだったので、AIも恐らくそうだろうとみんな思っていました。6月頃に導入される辺りでも、多分専門家はあんまり期待もしてないし、やっても意味ないかなとは思ってたんです。一方で、周りを見渡すと研究助成や投資などを背景にしてCOVID-19関係をやる方が増えてきました。

そういった状況の中で、放射線学会として何ができるかよく考えて、COVID-19と思われる症例を見つけたら登録しましょうっていうサーベイランスシステムを作っていました。COVID-19の検査数だけはわかるわけですよね。するとちゃんとそいつが、第一波第二波を捉えてたんで、これを使ってもしかしたら全くPCR検査と独立に流行が観察できるかもしれない、だから公衆衛生の観点から良いかもしれないと。津々浦々CTが普及してる日本の特徴みたいなので、日本の放射線学会としてサーベイランスしてよかった。ただ、これは人がやらなくてもいいよねと。

七つの大学病院と国立国際医療センター、東大、京大、阪大、九大、岡大、慶応、順天っていうかなり大きい方の代表的な七つの大学からのデータが全てJ-MID(※2)というシステムで集約されています。今、大体70万件ぐらい、2億枚ぐらいのデータが九大に置かれているで、それを活かして、それ全部人が見るの大変だけど、それをAIがCOVID-19らしいやつを分類してくれたらそれだけサーベイランスが可能なので、そこでAIを活用する方法もあるかなと思っています。

変化の少ない症例は真面目に人が追うのは骨が折れますが、一生懸命変化なく見続けることができるのはAIなので、サーベイランスにはすごくいいんじゃないかと思います。9月ぐらいに名古屋の森健策先生たちCOVID-19用のものを作ってくださり、これからそれを実際に実装してスクリーニングに、サーベイランスに使えたらいいなと考えています。

パターン分類もちょっとはするので、恐らくコロナの時にAIを用いたサーベイランスシステムが稼働していたら、変なウィルス肺炎が増えてますぐらいならわかるかもしれない。その所見が、特定のものができていくのが、ちょっと種類が違っても、集めるインフラができてたらすぐにちょっとしたAIができたら、後はサーベイランスしてれば流行がわかると。

※1 http://www.radiology.jp/member_info/news_member/20200424_01.html

※2 日本医学放射線学会がビッグデータやAI当を利活用した医療の構造改革として行っている取組みの一つ。全国規模の医用画像を収集する画像診断ナショナルデータベースの構築を実現させることを目標とし、全国の主要な医療施設の中で9施設が協力して大規模な画像情報データベースを構築している。J-MIDは青木教授が統括管理を行っている

プラスマン合同会社 代表社員 大塚 裕次朗

大塚 肺野の何かある種色んな特徴量で分類する、クラスタリングというようなそういったものを使って、常にモニターをして何か異常なとか、いつもの数ではない数、その特徴が出てくると。

青木教授 そうです。多分コロナの時に最初からあったら、なんか知らない、まず普段しないような、ウイルス性肺炎って基本的にはCT撮らないんですよ。ちょっと肺炎で胸ちょっと白いけど、まあCTまでいかなくても、だってそんなに症状軽かったりしたら撮らない。ところがコロナが流行ったときからみんな撮るようになったんで、多分あれサーベイランスしてたら急に増えたのはすぐにわかったと思う。だから、多分、色々な疾患をJ-MIDで集めといて、AIがある程度分類しといてくれると、分類が変わったら気が付くと思うので、そういった使い方はAIに向いていると思う。AIの一つの使い方で、ビッグデータを集めてあれば、それ解析する能力があると、サンプルでもいいと思うんで。毎日毎日、10万枚の画像データが集まってきていて、その内のサンプリングしたやつをいくつかAIが解析していれば、多分サーベイランスに充分に耐え得ると思うんですね。あと、なんとそれにレポートも付いてるから。レポートを使った方が楽かもしれないですけど。AIに解析させて、変な言葉が出てきて、今までない言葉が出てきていることを提示する。かつてない単語が使われているだけで、実は変な病気が流行っているってわかるかもしれない。

放射線科医の読影可能件数を上回った分をAIが処理する

大塚 AIの保険償還についてお話できる範囲内で教えてください。

青木教授 最大の問題は、AIvs 医者になると、医者の保険診療をAIが奪うことになってしまいますが、それはおそらく認めがたいことだし、あと医者が認めがたい。それから多分患者さんも誰が責任取れるかがわからなくなるということで、医者の代わりにAIというのは中々すぐには難しい。相当皆さんにAIが認知され、安全なことがわかってからでないと、いきなりは認められない。保険償還のスタートっていうのは、そこではないですよね。医者の代わりにAIではないと。

じゃ、医者+AIが医者だけよりもいいのでやりましょうっていう感じになると思うんですが、放射線科医が画像で使う場合に限るとすると、放射線科医が画像を一生懸命見た場合がが答えなんで、その中でAIがやっても「だって放射線科医ちゃんと見てるはずだから」みたいな、循環の否定的な論理になっていくわけです。なので、ワークフローがよくなるとか、短い時間でたくさん読影できるというのが受け入れられやすくなる。検査が増えてるんで、特に日本だったら許容できるのは、フルに一生懸命放射線科医が見て、一人の患者に10分、20分かかるところを、放射線科医+AIでやると5分でできました、たくさん読めるようになりましたという場合。このたくさん読めた分だけ前でやれば、それはアクセプタブルになると思うんですけど。

日本の場合は、約半数が読影されていないので全然構わない。だから世界的に見るとそこが難しいところだと思います。特にアメリカとかはすごい料金を取って完璧なレポートを書いてるはずで、そうでない場合は訴訟されて責任取らなきゃいけないけど、普段はたくさんきちんと読んでますっていう。そうすると、そういう状況でAIってどうやって入っていくかっていうと、やっぱりたくさん読んでるんで、AIを使った方が楽だと思えるぐらい、放射線科医がAIを使ったとするとたくさん読めて、このぐらいだったら払っていいよという設定にしか多分、アメリカはならないんじゃないかなと思います。自分で読影する症例を決めて、全責任を取ってその画像に関して見てたっていう状況だとすると、AIの立ち位置っていうのはほんとに放射線科医の補助になると思うんですけど。

保険収載を考える時も、楽になった分を分けてあげるよみたいなイメージでお金がいくと思うんだけど、日本の場合はこれがあまりない。結局、AIの利用で医師が楽になった分をAIの保険償還の対象とするよりは、読影件数をたくさん増やして、医師が読影できる件数を上回った分はAIが解析するみたいな発想になっていくと思うんです。少なくとも最初は画像診断AIに関しては放射線科医から保険償還する。放射線科医の人数が多分日本は永遠に足りないので、導入時に説明会をやるとかで入れてくっていうのはありだと思うんですけど。

臨床でAIを活用するには、数字の裏にあるAIの本質を見極めよ

放射線科医なしでの画像診断AIの利用は危険!?

青木教授 危険なのは、他の科がAIだけで、放射線科医なくてもいいじゃないみたいなと考えてしまうことで、少なくとも最初は避けた方がいいんじゃないかと思います。

例えば、中国のコロナのAIはすごく特異度も感度も高かったんですね。大塚さんはもうすぐにわかると思いますけど、すごい流行ってる地域で、若い人が多くて、紛らわしい写真は今まで撮ってないとすると、CTを撮るバイアスが強ところは、CT撮ったら大抵コロナで、コロナ以外の肺炎は流行ってないっていう状況だったらなんでもコロナって言っとけば感度も特異度も高くなるんですよね。でも話してもわからない人が多いので、やっぱり危険だと思います。特にこれは他の分野でも同じで、日本は他の場所のMRIとか気軽に行えるので、癌でもステージが低い人が多いわけですよね。

さっきのコロナと同じように、癌だと思った人で評価のためにやるMRIが多い他の国と、日本みたいにスクリーニングでも結構気軽に使うやつで、見かけ上同じような癌のステージングって言っても、感度、特異度を出して、AIでやりますって時に、海外のやつ持ってきたら全然だめなんですよね。それは、海外はかなり悪いと思った人というバイアスが入ってる。なぜならMRIが少なくて高いから。日本は安くていっぱいあるんで、気軽にMRIを行ってる。で、お話としては外国製の癌の検出AIも、やっぱり全然変わっちゃうんですよね。海外製のAIで日本人の患者データを解析すると、特にステージが低い方の成績がすごく悪くなる。そういうことは、放射線科医はわかるんですけど、放射線科以外の科が、何もわからないうちに使うのは危ないと思う。

大塚 最近アメリカでもAIのスペックシート上での性能と実際の性能の乖離が問題視されているという記事を見ました。つまりカタログスペックの性能が実地ではなくまったく発揮されていないというようなものなんですけれども、使えるAIを見極めるために必要なテストなど、どういった検証が必要かとか、そういったものにお考えはありますでしょうか?

青木教授 まず外国と日本だと、状況っていうのが違うので。輸入する時には日本でのテストというのはちょっと、100人とかでもいいと思うんですけど必要だと思います。それから後は、実は病院移っていくとすごく患者さんの種類が違うんですよね。患者さんのやってる検査なんかも違うので、いくつかの病院を回った人、それも放射線科医みたいに色々な科の、全部見てるって人じゃないと、総合病院と言ってもバイアスがかかった患者さんが来ていることに気が付かないかもしれない。そうすると、基本的には病院ごとにある程度差が出てくることは十分考えられると思います。病院が違っても結構違うという可能性があるということを知りつつ、つまり最初はそれが判断できる人が使う。それがわかる人が使わないと危ない。この病院に専門家がいないから代わりにAIが画像診断を行うと、かなり混乱が起きる。

他科に先駆けてAIの専門医教育を進めていくべき

習うより慣れよ

大塚 またその続きになるんですけど、Radiologist+AI、放射線科医+AIの力を高めていくべきとう論調がある中で、AIの得意なタスクを自らの診断に利活用することができる放射線科医を育てるための取り組みについて何かお考えはありますか?

青木教授 あまり深い考えはないんですけど、とりあえず使った方がいいんじゃないかということで、放射線学会の中に人工知能研究会というのを立ち上げて、そこで何回かハンズオンをやっています。去年の学会は流石にできなかったんですけど、今年は計画していますし、まず習うより慣れろというか、まず使いましょうみたいなところは進めています。後はメーカーさんが開発されたら説明会に行きますけれども、そういう説明会を自分の周りでは増やしていくとかですね。

定例の研究会にて

大塚 私も、そうですね。ディープラーニング何かいい本ありますか?とか、どうやって学びますか?という質問を受けることもあったんですけれども、ちょうど同じような考えで、多分何かの問題で実際にやるのが1番早いですよという風に言っていたことを思い出しました。

青木教授 ただ知ってる人が近くにいないとだめですので、ハンズオンとか勉強するとかで、医局に一人とか気楽に来てるところに一人ある程度わかった人がいるっていう環境を作るように、少なくとも僕の周りはしてますし、他のところもそれを作れるようにハンズオンをやったりとかしてたんです。

AIの臨床利用に関するガイドラインの策定

青木教授 後はあれですかね。AIの使い方に関するガイドラインも作ろうと思っていて、そのガイドラインに基づいて保険作るとかそういう筋書きが必要だと考えています。AIのガイドラインってすーっごい大上段に構えると終わらないと思うんですけど、ただ臨床でAIを使うためのガイドラインというか指針ぐらいのものを早く作りたいなと思っています。

大塚 それは日本の放射線医学会としてAIの使用の指針を作られているということでしょうか。

青木教授 そうですね。ほんとに臨床で使うと時に、例えば学会でやる研修を受けましょうとか、それから感度、特異度を知ってから使うとか、基本は自分で見てから使いましょうっていうことに最初はなってると思います。つまり、手を抜くなっていう。

AIに関する専門医教育をやるべき

大塚 そういったAIを使っていく指針なりガイドラインというものは、専門医の資格の要件にも関わってきたりしますでしょうか?私、その辺りの制度って詳しくはないんですけど、放射線医学専門医になる時、あるいは資格の維持の要件に何かしらそのAIに関する教育があるということが要件になったりするのでしょうか。

青木教授 まだないかもしれないですね。その辺入れるべきだと思うんですけど。ちょうど今専門医機構というのができています。専門医っていうのは、耳鼻科の専門医、眼下の専門医、放射線科の専門医って、専門医ですって言った時に、基準があまりにもバラバラで、例えば何年間教育を受けたら専門医って言っているのか、試験受かっただけの専門医もあるし、きちんと3年間トレーニングしてというのもあるし、講習会を受けただけでも専門医という場合もある。そこはバラバラすぎたので、基本のところを18領域、総合診療科を入れて19領域に関しては専門医機構で専門医っていうのを立ち上げて、講習を何回受けるとか、症例何例やるとかの目安を機構に出して決まる。なんで、ちょっとそれが立ち上がっているので、放射線科専門医の資格要件に気軽にAIを入れるのは難しい状態です。でも早々に入れていかないといけないと思います。やった方がいいですね、非常に。やるべきだと思います。試験にAIに関する部分というのを作りましょうとか、放射線科はAIに関して専門医教育を行い、対外的にも発信していった方がいいですね。

J-MIDデータの外部利用

大塚 J-MID研究について、Japan Safe Radiologyの概念のもと、全国7大学から画像データが収集されています。装置に関することから検査、診断にいたる全ての段階でデータ分析によるフィードバックが想定されています。すでにCOVID-19の診断AIの開発という成果もあり、クラウド化によってさらに利用しやすくなることが期待されますが、研究施設、企業等の利用申請や会員からの分析のアイデアなどについてもオープンになってゆくのでしょうか?

青木教授 まさにそこが今改革しようとしてるとこで。AMEDの研究が今年度で終わりです。一応倫理申請の都合上、7大学に来てもらうか、NII(国立情報学研究所)に属してもらうか、そうすればデータが使える。現状では、7大学にいても、NIIのデータに1回回ってからじゃないと使えないですけど、それを今回改修して、7大学であればデータを比較的自由に使えるようになる。それから、新しく大学や研究所、企業などもお金さえ払ってくれれば接続できるようになるという方向で検討してます。

放射線科医とAIの今後

大塚 最後に、放射線科医とAIの今後について、ご見解を。

青木教授 そうですね。みんな言ってることで、AIと仲がいい放射線科が出ないと生き残れないし、画像に関しては画像の専門家であることは画像のAIを使いこなす上で非常にアドバンテージなので、そこを活かして患者さんのためになるような読影をしていくのが大事だと思います。

大塚 長時間にわたり、ありがとうございました。

 大塚 裕次朗  

           順天堂大学 医学部 協力研究員

           プラスマン合同会社 代表社員

           ミリマン・インク コンサルタント

                 2006年 東京大学工学部卒

                 2007年 新日本監査法人 金融監査部

                 2008年 ミリマン・インク コンサルタント

     2017年 順天堂大学大学院医学部研究科 協力研究員

     2019年 プラスマン合同会社 代表社員

 青木 茂樹 先生

   順天堂大学 医学部 教授

   日本医学放射線学会 理事長  

 

     1984年 東京大学医学部卒

     1995年 山梨医科大学放射線科(部)助教授(副部長)

     2000年 東京大学大学院医学系研究科放射線医学 助教授(准教授)

     2008年 順天堂大学大学院医学研究科放射線医学 教授