AIの登場によって放射線科医の仕事がなくなると言われたことがありました。AI研究の第一人者であり、ノーベル物理学賞受賞者であるGeoffrey E. Hinton氏が2016年に「AIのほうが放射線科医よりも賢くなるので、放射線科医への無駄な教育はやめたほうがいい」と発言したことに端を発しています。しかしそれから8年が経って、放射線科医の仕事は増え続けています。このことは19世紀に写真機が発明されたときと同じです。写真というものが世の中に登場したことで、もはや画家という仕事はなくなるだろうと言われました。しかし実際は20世紀にピカソが現れ、写真機では捉えられない多面体をキャンバスに描き美術界に革命をもたらし、画家の仕事の幅を大きく広げました。私たち放射線科医もまた、AIという技術を手にしたことで、これから新たなステージへと進んでいくと感じています。しかしどれほど技術が進化しても、医療が目指すものはヒポクラテスの時代から変わりません。怪我や病気に苦しむ患者さんの苦痛を取り除き、患者さんが本来の自分の生活に帰り幸せに過ごせるよう尽力することです。最良の画像診断をすべての患者さんに届ける、AIはその一助になると信じます。
参考文献
1) Ideguchi R, et al. The present state of radiation exposure from pediatric CT examinations in Japan-what do we have to do? J Radiat Res. 2018;59:ii130-ii136. doi: 10.1093/jrr/rrx095.
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