佐久間先生 放射線部門の画像診断においてAIを活用することが大変重要であることは、どこの施設でも認識されていたと思いますが、AIは研究として試行的に取り入れるというのが、数年前の状況だったと思います。しかし、AIの真価は、活用して初めてわかるものです。2019年の北米放射線学会のセミナーでプラスマンさんのAI(胸部CT-AI Plus.Lung.Nodule。認証番号301AGBZX00004000)についてお聞きし、永田先生を通じて問い合わせをして、お話を伺いました。
胸部CTのAIについては、撮影したすべての患者さんに実施できる環境をつくるということが大事だと思いました。対象となる全てのCT画像、例えば腹部CT検査であっても、その中に肺野の画像が含まれていればAI補助診断を使えるような環境を、まず三重大学附属病院で構築するということに価値があると考え、システムとして病院の中で構築しました。立命館大学の中山先生、ENTORRESの中子さんと共同で、三重大学附属病院で撮影されたCTで肺野が含まれる画像をすべて、PACSからプラスマンのAI解析サーバに送るシステムを構築したわけです。当日のCTだけでなく、1年くらい前のCTを自動的に探してプリフェッチして解析しておく機能も当初より実装しています。プラスマンさんのAI解析システムは、撮影された前画像を直ちにAI解析してPACSに送るといったシステムを組む上でも、フレキシビリティが高く、短期間に導入して稼働させることができました(注釈:Plus.Lung.Nodule画像から肺野を認識して解析するため、一部でも肺野が含まれる画像であれば解析できる)。
二つ目は、大学病院では診断専門医取得前の、若い先生たちのトレーニングを行っています。最近では若い先生のAIに対する意識も高まってきましたが、数年前は画像診断補助のAIはまだ特殊で敷居の高いものというイメージがありました。放射線診断医のトレーニングを受けている若手の先生が日常的にAIに触れるという機会をつくって、AIに過大な期待をしたり、否定的な先入観を持つことがないように、皆さんに自然に慣れ親しんでもらえるような環境を大学で作りたいと考えていました。
もう一つの要因は、私が中央放射線部長・放射線科長と別に、医療情報部の部長もしておりましたので、きちんとしたコンセプトがあれば附属病院内でシステムを柔軟に組むことができたことです。また、ENTORRESの中子さんとはこれまでも三重大学放射線医学講座の仲間として、一緒にいろんなシステムの開発をやってますので、今回のAIに関しても地元企業と三重大学が協力したことも早期にシステムを立ち上げることができた大きな理由かと思います。