Plusman LLC

2022年4月

Mathematical Medicine Vol. 2

医療用AIの第一人者に聞く Interview with Leading Experts in the Medical AI Field

大学病院が地域医療DXを推進していく

佐久間 肇先生

三重大学 副学長
三重大学附属病院 副病院長(診療)
放射線科長 中央放射線部長 医療情報管理部長
大学院医学系研究科放射線医学 教授

北川 覚也先生

三重大学大学院医学系研究科先進画像診断学講座 教授

胸部CTのAIについては、撮影したすべての患者さんに
実施できる環境をつくることが大事

Plus.Lung.Noduleをいち早く臨床導入してくださった三重大学佐久間肇教授、北川覚也教授。心臓CT・MRIの分野で輝かしい実績を残してこられた先生方が、胸部CT-AIを導入された狙いは何だったのか?実際に導入してどうだったのか?期待する新たなAI、AIの管理、地域医療連携、北勢サテライトプロジェクトについてもお話をお伺いしました。

三重大学 副学長 佐久間 肇先生

胸部CT-AI Plus.Lung.Noduleへの期待

プラスマン プラスマンにとって最初のお客様が三重大学様でしたが、導入して下さった2020年より前からAIの導入を検討されていたというふうに伺っています。他の施設に比べて早くからAIの利用・導入を考えていらっしゃった、その期待や狙いというのは、どういったところにあったのでしょうか?

佐久間先生 放射線部門の画像診断においてAIを活用することが大変重要であることは、どこの施設でも認識されていたと思いますが、AIは研究として試行的に取り入れるというのが、数年前の状況だったと思います。しかし、AIの真価は、活用して初めてわかるものです。2019年の北米放射線学会のセミナーでプラスマンさんのAI(胸部CT-AI Plus.Lung.Nodule。認証番号301AGBZX00004000)についてお聞きし、永田先生を通じて問い合わせをして、お話を伺いました。

胸部CTのAIについては、撮影したすべての患者さんに実施できる環境をつくるということが大事だと思いました。対象となる全てのCT画像、例えば腹部CT検査であっても、その中に肺野の画像が含まれていればAI補助診断を使えるような環境を、まず三重大学附属病院で構築するということに価値があると考え、システムとして病院の中で構築しました。立命館大学の中山先生、ENTORRESの中子さんと共同で、三重大学附属病院で撮影されたCTで肺野が含まれる画像をすべて、PACSからプラスマンのAI解析サーバに送るシステムを構築したわけです。当日のCTだけでなく、1年くらい前のCTを自動的に探してプリフェッチして解析しておく機能も当初より実装しています。プラスマンさんのAI解析システムは、撮影された前画像を直ちにAI解析してPACSに送るといったシステムを組む上でも、フレキシビリティが高く、短期間に導入して稼働させることができました(注釈:Plus.Lung.Nodule画像から肺野を認識して解析するため、一部でも肺野が含まれる画像であれば解析できる)。

二つ目は、大学病院では診断専門医取得前の、若い先生たちのトレーニングを行っています。最近では若い先生のAIに対する意識も高まってきましたが、数年前は画像診断補助のAIはまだ特殊で敷居の高いものというイメージがありました。放射線診断医のトレーニングを受けている若手の先生が日常的にAIに触れるという機会をつくって、AIに過大な期待をしたり、否定的な先入観を持つことがないように、皆さんに自然に慣れ親しんでもらえるような環境を大学で作りたいと考えていました。

もう一つの要因は、私が中央放射線部長・放射線科長と別に、医療情報部の部長もしておりましたので、きちんとしたコンセプトがあれば附属病院内でシステムを柔軟に組むことができたことです。また、ENTORRESの中子さんとはこれまでも三重大学放射線医学講座の仲間として、一緒にいろんなシステムの開発をやってますので、今回のAIに関しても地元企業と三重大学が協力したことも早期にシステムを立ち上げることができた大きな理由かと思います。

プラスマン そのような期待や狙いを持たれてPlus.Lung.Noduleを導入頂いて、その目的は達成されたのでしょうか?

佐久間先生 肺野が含まれているすべてのCT画像を送って、AIの解析結果がちゃんとPACSで表示されることを確認した時点で、私としては一つの目標を達成したと感じました。教授が皆さんに使え使えと言わなくても、役に立てば自然に使うんじゃないかという発想です。

プラスマン 全症例にこだわっていらっしゃるのはどうしてでしょう?

佐久間先生 全症例をあらかじめAI解析してからPACSに送るのはシンプルな理由で、AIを導入したから読影に時間がかかって、仕事を終えて帰るのが遅くなったら意味がないということです。読影してる先生がAIの解析結果を見たいと思えば、すぐにボタン一つで見れるような環境でないと、わざわざ導入する気にならなかったということです。

プラスマン 実際に導入してみて、その期待どおりでしたでしょうか?そうではなかったでしょうか?

北川先生 具体的にPlus.Lung.Noduleの話をしますと、非常に感度が高くて、病変の見逃しが少ないなということを感じました。その一方で、もちろん拾いすぎる部分もあるので、どうやって使うのかっていうところを上手に考えて、臨床に落とし所をつけていく必要はあるなということを感じております。

肺に病変があることが分かっている人に使う必要はなくて、「多分病気がないんじゃないかな。でも最後に確認をしたいな」っていう、そういった使い方が割といいと思いました。多分同じようなことが、いろんなAIについて言えるんじゃないかと思っていて、お薬だったら「こういう患者さんがこういう症状のときに、検査値がこうだったら使うといいですよね」みたいなことが、添付文書やガイドラインにあるわけですけど、AIソフトウェアの添付文書には何をするものかということは書いてあっても、どういう時に使うと効果的かは書いてありません。AI画像診断のうまい使い方を見つけていく必要があるなということは感じているところです。

三重大学大学院 教授 北川 覚也先生

プラスマン 昨今、診療報酬改定の資料と並行して、日本医学放射線学会から示されたAIの利用における指針(人工知能技術を活用した放射線画像診断補助ソフトウェアの臨床使用に関する管理指針)において、主に安全管理についての体制の整備というのが明確化されました。まさに今おっしゃられた、AIの使い方というものを、まずは放射線科医がちゃんと検証してというか、放射線科医がある種、病院の指導的な役割を持って、AIが正しく使われるようにしていくというような趣旨のガイドラインだと思いますが、三重大学病院においては、どのような体制を構築されていますでしょうか。

佐久間先生 附属病院の診療では、AIは放射線部だけでなく内視鏡室などでも使われていると思います。しかし、病院としてまとまって「AIはこう使いましょう」というガイドラインは、今のところ特にないですね。内視鏡のAIの方が、検査を行っている最中に患者にアラートを出すという点で、医療安全上の体制整備に必要性は高いのかもしれません。放射線科の画像診断については、AIはこう使うべきだという明確な答えはまだないと思うんですね。まず皆が経験するというところからスタートし、経験を積み重ねてゆく中で、AIの適正利用と安全管理に関する体制の整備をしてゆくことが、重要なのではないかと思います。

ディープラーニングの医療での利用という観点からは、例えばこのCT画像ですけれども、読影している若手放射線科医はあまり意識していないかもしれないけれども、CTもGPUを使って膨大な計算が行われて画像が再構成され、その画像がPACSに届くいときに、Plus.Lung.Noduleによる解析がすべての症例の全スライスで行われているわけですよね。知らない間にディープラーニングに関連したものすごい計算が、画像が読影医に届くまでになされているわけです。ですから、実はAIは放射線科の日常診療に深く入り込んでいるのですが、それを意識することはないというのが実態と思いますし、それが正しい使い方なのだろうと思います。

プラスマン 日常に入り込んでいるというのは、先生方がAIを違和感なく受け入れているということでしょうか?

佐久間先生 読影している放射線科医の側からみれば、全症例のAIの解析が行われていることは皆さんに周知していますので、便利だなと思った人は誰でもすぐに利用できるわけです。CT画像の再構成もAI技術が常時使われているわけですよね。皆さんにとっても、水や空気みたいなもんになっていると思うのです。

北川先生どうですか?

北川先生 ついこの間プラスマンさんに入れていただいた、胸部レントゲンのAI、あれはなかなか使いやすいと思っていて(2022年4月、胸部単純写真AI Plus.CXR(認証番号301AGBZX00004000)を三重大学に導入した)、これもさっき申し上げたように病気であることが明らかな場合に使う必要はあんまりないんですけれど、一見何もないようなときに、AIを適用すると、まるで研修医が横に座ってて「先生ここどう?」って聞いてるような感じがするんですよ。それで、「それは血管だから大丈夫だよね」みたいなことを言いながらやっていくと、中には研修が「ここは?」って言ったところが大事だったということもあり得るので、そういう使い方でごくごく自然に、AIの結果を隣に並べて読めるっていうのは、本当にいいなというふうに思ってますね。

胸部CTのAIについては、撮影したすべての患者さんに
実施できる環境をつくることが大事

働き方改革とAIの関係について

佐久間先生 医療現場では働き方改革が非常に大事になっています。大学病院では今後数年、働き方改革が正念場を迎えます。働き方改革による勤務時間の上限は、診療のあり方が相当変わるぐらいに影響があると思います。AIは診断補助として見落としを防ぐ効果はあるのだけれど、AIを使おうとするとマウス操作が増えて読影時間が長くなることも多いのではないでしょうか。AIを使うために医師の余計な手間や時間がかかると、大きな視点からみると患者さんの診療にマイナスの影響が出てしまいます。

パイロットもトラックの運転手でも、何時間以上連続して勤務してはいけない、翌日の勤務までに最低何時間休みを取らなければならないとか、いろいろな制約がありますよね。放射線科医もやっぱり人ですから、一日十数時間、何万枚も画像を見るということは、これからもっと難しくなってきます。AIによるサポートは重要ですが、帰る時間が遅くなるようなAIシステムは、結局診療に使えなくなってくると思います。

北川先生 どうしても、見る情報が増えるわけですから、だから、今まで2回3回見直していたものが、AIがあるおかげで、3回はやらなくていいよねとか、それぐらい減らせるんだと速くなる可能性がありますよね。それをうまく導入していくには、ただ入れたっていうだけではなくて、ビューワーとうまく連携をとってより使いやすい形にするとか、どんな時に使えば実際勤務時間の短縮に、読影時間の短縮につながるのかとか、そういった辺りを詰めて、「こうやって使おうよ」ってみんなにアナウンスできるといいなということは思ってるんです。まだまだそこまでできてないですけどね。

佐久間先生 労働低減と勤務時間短縮の鍵になるのは、結節が増大しているかどうかについて、最新の画像で「この結節増大してますよ」という情報がひと目でわかることが、ポイントになると思います。今のところ、過去の画像をシステムが自動的に選んでAIが結節の大きさを計測する機能はあるのですが、最新の画像上に増大したか否かを表示する機能が実現されてないので。これは働き方改革という観点からも相当重要なポイントになると思います。

北川先生 そうですね。過去画像との比較を常にわれわれはやってますので、そこで「増大しているのはこれですよ」というものを教えてもらえると、非常にありがたいですね。AIがあってもなくても、比較は人の目ですると思うんですけど。AIを使うとより効率的になるんじゃないかなという気がします。

佐久間先生 もしこうした機能があると、AIを導入する施設はかなり出るんじゃないかなと、個人的には思います。

AI導入を検討されている施設へ

プラスマン 先ほどのお話で、AIが空気のようになっているというお話がありました。結局AIをどう使うべきというのを決めてから下りてくるというよりは、まず使ってみて考えていくということかなと我々も思っています。今まさに見たいと思ったものにも、処理がかかっていてパと見れるっていう状態が実現している病院は、幾つかの病院は近い状況だと思うんですけど、プリフェッチで1年ぐらい前の画像も含めて解析しているAIシステムが全自動で動いているのは、おそらく三重大学附属病院のみだと思います。ですので、これからAIの導入を考えていく病院に対して、何かお伝えできることはありますか?

入れたまさに翌日とか、1週間くらいの間は、何か大きな混乱というのはあったりしましたでしょうか?あるいは、導入してから今日までの間に事故というか、それで診療が混乱したとか、そういうことってありましたでしょうか?

佐久間先生 みんなにすぐ使えと言った訳ではなく興味のある人から使ってったっていう感じで導入しました。

北川先生 他の診療科にオープンにしているわけではないので、放射線科の中だけの話ですのでトラブルは特になかったですね。

佐久間先生 大学病院ではAIを健診のスクリーニングに使うことはなく、もともと所見がたくさんある患者さんが多いですから、一例一例に相当時間をかけて読んでいます。そういう意味では、一般病院や健診施設に比べると、大学病院ではAIによる肺結節検出のインパクトは比較的限られているかもしれません。一般病院では、もっと幅広くAIを使う人が出てくるかも知れません。

北川先生 放射線科医が全体的に足りていないところがほとんどで、AIへの期待は大きいですが、使い方を間違えると、現場が混乱する可能性があります。

単なる検出以上のAIの登場を期待

佐久間先生 三重大学病院では放射線科以外の、心臓血管外科や小児循環器にAIに興味がある先生がみえて、F論文も書かれています。ですから、当病院ではAIに対する興味は相当高いのですが、先天性心疾患を専門とする先生方なので、胸部単純写真からQp/Qsという肺血流が増えているかどうかの指標をAIで予測する使い方をされています。だから、今後のAIに期待するという意味では、現在の放射線科関連のAIが肺結節やすりガラス陰影の見落としを防ぐという目的に限定されすぎているのかもしれません。例えば、大学病院の術前患者さんの胸部単純写真では、心拡大がないかとか、大血管系に異常がないかなどを確認することが重要で、大学病院の中で肺結節の検出を目的に胸部単純写真を依頼される先生は少ないのではないでしょうか。

北川先生 あんまりないですよね。本気で結節を探さなきゃいけないときは、CTが依頼されますから。

佐久間先生 三重大学病院では、心エコーの検査枠があふれていることもあり、非心臓手術の術前患者さんでは、息切れなどの症状がなければ術前心エコー検査は行いません。胸部単純写真は、術前検査として心不全などの心血管系の異常や肺の偶発的な異常とかがないか念のため胸部単純で確認するという使われ方が多いんですよ。胸部単純写真のAI補助診断を病院全体に導入したと仮定すると「このAIシステムは結節を見てるだけです」といった細かい注釈をつけたとしても、忙しい各科の先生は読まないと思います。だから、他の科の先生が「AIで異常がないから大丈夫だ」と誤解を招く可能性があるですね。それが怖いんです。

胸部単純写真AI Plus.CXRの活用

佐久間先生 胸部単純写真のAI解析は、一般病院や健診施設には向いてると思うんですけど、大学病院で胸部単純写真AIを試すっていうのは、患者さんの背景を考えると簡単ではないですね。

北川先生 いろんな症例があるので、試すという意味ではいいのかもしれないんですけど、大学病院で有効性を出すっていうのはなかなか。結節のスクリーニングといった目的には大学病院の症例は向いてないですよね。

佐久間先生 肺転移を探すような目的では、初めからCTが依頼されてますからね。むしろ心拡大がないか、胸水がないかとか、心大血管に異常がないかとか、そうした目的に応えてくれるAIが必要ですね。

北川先生 意外に間質性肺炎の線維化は拾ってくれる印象です。

放射線科医によるAIの管理

プラスマン なるほど。それもなんかすごく説得力があるというか、一見まず導入して使ってみるという感覚もありつつ、ただやはり病院全体にご利用頂くとなると、いきなりは難しい。まずこれはどういうAIで。何を検出対象としている、こういう目的はいいけど、こういう見落とし、こういうのがあるよ等、そういうのを使ってから指導していくというのがやっぱり必要ということでしょうか?

佐久間先生 大学病院の各科の先生は皆さん非常に忙しいので、各科の先生でAIを自主的に使ってみようという人はなかなか出てこないわけですよね。AIの使い方や、どのような病気の診断に役に立つか、どうような病気には役立たないかなどを、病院全体の何百人もの先生に詳しく説明して使ってもらうというのは、現実的ではないと思います。

プラスマン だから放射線科医が管理する必要が出てくるということでしょうか?

佐久間先生 放射線科医はCT、MRI、核医学の読影で手いっぱいで、院内の単純写真を全部読影できている施設は少ないわけですね。単純写真用のAI読影補助が入ったので、他科の先生のAI活用を放射線科が管理するようになった。でも、放射線科医は単純写真を読んでいませんというのは、やはり無理がありますよね。

地域の医療機関が抱えるAIに対する不安を
三重大病院が緩和し、より良い医療を患者さんに届ける

地域医療連携と北勢サテライト

プラスマン 北勢サテライトとはどういったプロジェクトでしょうか?

佐久間先生 北勢サテライト医療DXは、三重大学でこの4月から開始する事業です。地方国立大学にとって地域貢献は非常に大事なわけです。三重大学医学部は三重県内全域に医師を派遣し、大学として重要な使命を果たしているのですが、地域の住民の方を直接診るという意味では、大学病院は関わりが若干少ないところがあるんです。三重大学の北勢サテライト医療DX事業では、桑名市総合医療センターに拠点を置いて、三重県の北部で医療DXを推進する予定です。

オンライン診療や在宅診療、PHRの地域医療における重要性は急速に増していますが、放射線診断の領域でも、AIを使った様々な診療補助ソフトウェアが利用できるようになり、いろんな会社が三重県内の中小病院にも売り込みをかけていると聞いています。同時に、各病院の院長先生からは「どこのAI診断補助ソフトを選んで良いのか分からない」とか、「どういうふうに使っていいか分からない」という声を聴いています。また、自分の病院がある会社のAI診断支援サービスと契約すると、もうそこから乗り換えられないんじゃないかというか、不安もあるようです。

三重大学病院では2年前からすべての胸部単純CT画像にAIをかけており、現在では複数社のAIが動く状態になっています。三重大学放射線科や、桑名市総合医療センターでAI品定めというか、ある程度の評価を行って、これなら大丈夫というAI機能を三重大学病院に設置するクラウド型サーバで、地域医療DXの一環として三重県北勢地域の希望する病院に提供してはどうかという考えです。三重県では三重大学病院や関連病院の放射線診断専門医が県内の多くの病院を対象に自宅から遠隔画像診断を行っており、画像診断の地域ネットワークが形成されています。AIに関する品質保証と画像診断機器との接続などを地域医療DXの一環として行い、地域の住民や医療機関にAIによる診断支援を安心できる形で低コストで提供することは、県民の皆さんにより良い医療を提供するうえでも重要ではないかと考えています。

佐久間先生 それと、AIは日進月歩で、どんどん進化していきますので、いったん導入したら10年間は使い続けるCTやMR装置とは違うと思うんですね。AIの機能は数年でどんどん変わっていきますから、大学病院が地域医療DXの一環として、AIを時代の進歩とともに選択して高品質のサービスを県内に提供することも大事ではないかと思います。

プラスマン ありがとうございます。地域医療連携という意味で、三重県、三重大学さんと地域で、結構すごく大学病院が頼られているなというか、つながりがすごい強いのですね。

佐久間先生 三重大学の関連病院と三重県という地域はほぼ一致しています。三重大学では県内のほぼすべての病院と関係病院長会議を定期的にやってますし、AIについても地域で協力して取り組んでいくには向いてる場所かなと思います。

プラスマン 地域の病院側が三重大学を頼っていますよね。

佐久間先生 三重大病院と関連病院の関係は全体に良いと思います。

プラスマン うまくいっている例なのかなというふうに思いました。そういった関係をつくるコツというのはあるんでしょうか。

佐久間先生 三重大学が県内全体に医師を派遣してるという、歴史ですよね。関連病院と協力してやってるから、AIについてもやっていけそうだということだと思います。

北勢サテライトでのプラスマンのAIの活用

プラスマン 先日、胸部単純写真のAI(Plus.CRX)も導入しました。胸部単純のAIとCTのAI、2種類のAIを導入していただき、どのような活用をされようと考えていらっしゃいますか?

北川先生 これは先ほど、北勢サテライトDXの話でいえば、やはり検診のCT,健診の胸部X線というのがたくさん撮られてるわけですけども、これも読み手がなかなか足りないような状況です。補助診断としてAIにすごく期待があるわけですが、先ほど佐久間先生がおっしゃったように、なかなか各病院の判断でAIをそれぞれで導入するっていうのは厳しい状況ですから、三重大学のクラウドにデータをアップしてもらって、こちらで解析をして返すといったことを想定はしてます。どんなふうに結果をお返しするのが一番いいか、その辺りを含めていろいろこれから検討していきたいと思います。

プラスマン 検診って、二読が法律で義務化されていると思いますが、それでもAIを入れて、いくらかその役に立ちそうでしょうか?

佐久間先生 二読についてはAIが導入されても、変わることはないと思います。教育面では、AIが指摘してくる領域について、「これは正常構造です」とか、「これはこういう陰影で病気じゃないよね」って若い先生に応えてもらい、トレーニングするのは良いかも知れません。

北川先生 確かにそうですね。

佐久間先生 放射線科専門医だったら「この陰影はこうだよね」って即座に分かると思うのですが、他の科の先生が皆さんそうかというと、必ずしもそうでもありませんね。

北川先生 胸部レントゲンのAIがサジェストしてくるところは、正常構造のときのほうが圧倒的に多いです。放射線科医だったら「それは正常構造だよね」ってどんどん言えるんですけど、トレーニングが不十分だったり心配性な読影者のもとではAIと合わせて最終的に拾いすぎになる可能性は十分あるんです。上手に使うとスピードアップや見落とし減少の効果が期待できると思います。

 佐久間 肇 先生

   三重大学 副学長

   三重大学附属病院 副病院長(診療)

   放射線科長 中央放射線部長  

   医療情報管理部長

   大学院医学系研究科放射線医学 教授

     2022年 三重大学 副学長(~現在)

     2018年 三重大学附属病院 副病院長(診療)(~現在)

     2012年 三重大学大学院医学系研究科

         放射線医学 教授(~現在)

     2009年 三重大学医学部附属病院

         放射線診断科 科長(~現在)

         三重大学医学部附属病院

         中央放射線部 部長(~現在)

     1998年 三重大学医学部付属病院放射線科 准教授

     1996年 三重大学医学部付属病院中欧放射線科 講師

     1991年 カリフォルニア大学サンフランシスコ校

         放射線科 Research Fellow(~1996年)

     1985年 三重大学医学部医学科卒業 

 北川 覚也 先生

   三重大学大学院医学系研究科

   先進画像診断学講座 教授

     2020年 三重大学大学院医学系研究科

         先進画像診断学講座 教授(~現在)

     2019年 Charite Universitatsmedizin Berlin 

         Department of Radiology 

         Mercator-Fellow of the DFG(~現在)

     2019年 三重大学医学部付属病院放射線科 准教授

     2015年 三重大学医学部附属病院中欧放射線部 講師

     2010年 三重大学医学部附属病院中央放射線部 助教

     2006年 Johns Hopkins University Research Fellow(~2008年)

     1997年 三重大学医学部医学科卒業